雨合羽とダウンジャケットと空調服 ― 高気密・高断熱を考える

雨合羽の上にダウンジャケットを羽織り、さらに空調服を着て生活している人がいたら、皆さんはどう思いますか。周りにはいないと思われるでしょうが、実は今建てられている家の多くが、これと同じことをしています。

高気密・高断熱の家の中身

高気密・高断熱住宅は、次のような工事で作られています。

  • 気密:気密性を確保するために、躯体を気密シートで覆う(=雨合羽)
  • 断熱:柱や梁などの軸組に断熱材をパンパンに詰める(=ダウンジャケット)
  • 換気:気密で悪くなった室内の空気を入れ替えるため、換気扇を付ける(=空調服)

そのうえ、これらを実現するために新建材が多用されています。私は、変なことをしているなと感じています。

新建材は「後から」有害性が見つかってきた

昭和の住宅には、アスベストを含む新建材がほぼ使われていました。施工当時は無害と信じられていましたが、後に健康被害が発生し、使用禁止になりました。

シックハウスも同じです。ホルムアルデヒドなどによる健康被害が出て、24時間換気の義務化やF☆☆☆☆規格ができました。

新建材は今も次々に開発・販売されています。これから先、どんな有害性が見つかるかは誰にも分かりません。その新建材で高気密・高断熱を実現することには、大いに疑問があります。

また、木に気密シートを巻いて呼吸できなくするのも問題ですが、そのシート自体の耐久性も40年ほどらしいです(樹脂製品ってそんなに持つんでしょうか?)。

省エネ基準の義務化によるCO₂排出の削減や、住宅の温熱環境の改善は素晴らしいことです。ただ、使う材料や工法は十分に検討する必要があると思います。

伝統建築という選択肢

日本の伝統家屋は、軒を深くして日差しを調整し、風が抜けるように作られていました。今でいうパッシブ建築の原型です。素材は呼吸する自然素材で、春の陽気や夏の暑さ、秋の涼しさ、冬の寒さを楽しむ、情緒ある暮らしがありました。

一方、高気密・高断熱住宅は窓を小さく少なくし、換気扇で強制的に換気します。季節を気にせず快適に過ごせますが、情緒も風情もない暮らしは味気ないと思います。

解体・改修・廃棄まで考える

伝統建築は、解体や改修のときにも無駄がありません。

  • 無垢の木材は転用できる
  • 土壁の土は練り直して塗り直せる。土に還すこともできる
  • 瓦は割れやひびがなければ再利用でき、砕いて砕石代わりにもできる
  • 木製建具や基礎石も転用できる

これに対して、現代の新建材の建物は耐用年数が短く、再利用が難しいため、ほとんどが産業廃棄物として処分されます。これではまったくエコとは言えません。

健康面でも省エネの面でも、どちらの家が優れているかは一目瞭然だと思います。

伝統建築で高気密・高断熱を実現するのは難しいですが、リビングや寝室のようによく使う部屋を断熱仕様にすれば、ある程度快適に過ごせます。

省エネ基準の適用除外「気候風土適応住宅」

省エネ基準への適合が義務化されて、高気密・高断熱住宅が増えています。しかし、伝統建築は構造様式上、省エネ基準に適合させるのが難しいため、国交省の告示で適用除外にできる仕様規定が定められています。この規定を適用した住宅が気候風土適応住宅です。細かい規定はありますが、伝統建築であれば、ほぼ適用除外にできます。

おわりに

高気密・高断熱の家は温熱環境が整っていて、過ごしやすいと思います。それでも、ビニールで覆い、断熱材を詰め、建材で仕上げた家に、私は魅力を感じません。化学製品で密閉された容器のようで、日本の伝統的な建築からは遠すぎて、住宅と認識できないのです。 伝統建築の新築・改修でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。